院長からのご挨拶
「最期までその人らしく生ききる」ために、医療ができることを在宅医療というかたちで、この地域に届けたい。
私が在宅診療医を志した原点には、2011年3月11日に発災した東日本大震災での体験があります。
当時、私は東北大学医学部の5年生で、岩手県釜石市の実家が黒い波に飲み込まれる様子をテレビで観て、ただ呆然としているしかありませんでした。
父方の祖母は津波に流され行方不明となり、祖父は入院先が停電と浸水したことにより適切な医療を受けられず、肺炎で亡くなりました。
それまでの私は、自分がどんな医師になりたいか、はっきりと分かってはいませんでした。
しかし震災によって、それまで当たり前にあった日常や当たり前に居た人たちが、突然、失われたことで「自分が医師になる意味」を考えるようになりました。
医師になった私は「医師として、東北で暮らす人々に寄り添い続けたい」という思いだけを持ち、岩手や宮城で働くなかで、震災を機に開設された「やまと在宅診療所」と出会い、在宅医療の道に進みました。
人は誰しも、生まれた瞬間から「死」へと向かう旅路を歩んでいます。
死がいつ訪れるかは誰にもわかりません。だからこそ、できるだけ、その最期の時間を「その人らしく」。住み慣れた場所で、大切な人のそばで、穏やかに過ごせるよう支えたい。それが医師としての私の使命だと信じています。
私たちの診療所では、「最期までその人らしく生ききる」ために、医療ができることを在宅医療というかたちで、この地域に届けてまいります。
患者さん一人ひとりの人生の物語に耳を傾け、ご本人とご家族が安心して日々を過ごせるよう、丁寧に向き合っていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
令和7年6月
やまと在宅診療所仙台北 院長 川越徹彰
